Skip to content
業務OS Lab
Go back

経営者の右腕がAIで変わる――戦略を語る人から、回す人へ

はじめに――「右腕」とは何か

経営者の右腕。よく聞く言葉だが、実際にやっている人は少ない。

コンサルタントは戦略を語る。アドバイザーは助言をする。でも「右腕」は違う。右腕は、決めて、回して、終わらせる。戦略を描いたあと、それを実行計画に落とし、進捗を管理し、問題が起きたら対処し、最終的に結果を出す。そこまでやって初めて「右腕」だ。

自分は中小企業で経営幹部をやっている。経営戦略、PL管理、採用、評価制度、マーケティング、システム導入、クライアント対応、組織設計——担当した業務を書き出したら85を超えた。「何をやっていないか」の方が短い。

この5年間で痛感したのは、右腕の仕事の半分以上は「判断」ではなく「作業」だったということだ。

そして今、AIがその「作業」を肩代わりできる時代になった。


右腕の仕事の現実

戦略を語るだけなら、誰でもできる

経営コンサルタントの世界には、ある種のジョークがある。「コンサルは答えを出すが、実行はしない。だから失敗しても責任を取らない。」

これは半分は正しく、半分は不公平だ。コンサルが悪いのではない。役割が違うだけだ。でも、経営の現場にいると、「戦略を語るだけの人」と「戦略を回す人」の間には、圧倒的な差があることを実感する。

戦略を語る人は、きれいなスライドを作る。フレームワークに当てはめて分析する。「御社はここが弱いので、ここを強化すべきです」と提言する。そして帰る。

戦略を回す人は、その提言を受けて、実行計画を作り、担当者をアサインし、週次で進捗を追い、遅れがあれば原因を特定し、計画を修正し、経営者に報告し、必要なら方針転換を提案し、最終的に数字で結果を見届ける。

後者の仕事量は、前者の10倍はある。

85業務の内訳

自分が5年間で担当した業務を棚卸ししたとき、カテゴリ別にはこうなった。

見てほしいのは、この業務リストの中に「考える仕事」と「回す仕事」が混在していることだ。

「経営戦略の策定」は考える仕事。でも「策定した戦略をKPIに落とし、毎月進捗を追い、経営会議で報告する」のは回す仕事だ。PL管理も同じ。数字を見て判断するのは一瞬だが、データを集めて整理してレポートにまとめるのに数時間かかる。

右腕の時間の半分以上が「回す仕事」の作業部分に消えていた。


AIが変えたもの

作業を消して、判断に集中する

自分はClaude Codeというツールを軸に、業務をAIで自動化する仕組みを作った。65個のスキル(AIに登録した機能単位)がある。

具体的に何が変わったか。

AIに任せた業務の例: 経営会議のアジェンダ設計、KPIの進捗モニタリング、予実管理の下書き、競合動向の自動レポート。これらは「右腕の定型業務」であり、AI化の効果が最も大きかった。

右腕の仕事には「考える部分」と「回す部分」が混在している。AIが「回す部分」を引き受けることで、人間は「考える部分」に時間を使えるようになった。

でも、本当に重要なのは時間の削減ではない。「回す仕事」の作業部分が消えたことで、「判断」に使える時間が圧倒的に増えたことだ。

判断の質が上がる

面白いのは、時間が浮いただけでなく、判断の質も上がったことだ。

以前は「データを集める作業」に時間を取られて、肝心の「データを見て考える時間」が足りなかった。月次レポートを作るのに4時間かけて、レポートの中身について考える時間は30分。本末転倒だ。

今は逆転している。AIが30分でレポートの下地を作り、自分は残りの時間を使って「この数字の背景は何か」「次に何を変えるべきか」を考える。

右腕の本質的な価値は「判断」にある。判断の材料を集める作業に時間を取られていたら、判断の質は下がる。AIは、右腕を本来の仕事に集中させてくれるツールだ。


1人で複数社の「右腕」になれる可能性


以下は自分の仮説であり、まだ検証していない。実現するかどうかは分からない。ただ、この方向で動き始めている。

従来の限界

経営者の右腕は、基本的に1社専属だ。なぜなら、右腕の仕事は時間がかかるからだ。

1社の経営会議に出て、PL分析をして、KPIを追って、組織課題に対応して、マーケの施策を管理して…。これをやると、1社で週3〜4日は埋まる。物理的に、2社以上の右腕を兼任するのは難しい。

結果として、中小企業が「経営者の右腕」を外部から調達しようとすると、月額数十万〜100万円レベルのコストになる。売上数億円規模の会社にとって、これは大きな負担だ。

だから多くの中小企業の社長は、右腕がいないまま1人で判断し続けている。

AIで変わるモデル

もし、右腕の「回す仕事」の大半をAIが肩代わりできるなら、話が変わる。

右腕の人間が使う時間は、「経営者との対話」「判断・意思決定」「方針の設計」に絞られる。これなら、1社あたり週1〜2日で十分な価値を提供できるかもしれない。

つまり、1人で3〜5社の「右腕」を兼任できる可能性がある。

そうなれば、1社あたりの費用を月10〜30万円に抑えられる(自分の稼働時間と兼任社数から逆算した試算)。中小企業にとって手の届くコストだ。

「安かろう悪かろう」にはならない理由

「費用が半分なら、品質も半分では?」という疑問はもっともだ。

でも、考えてほしい。AIで自動化しているのは「作業」であって「判断」ではない。判断の質は、人間の経験と能力で決まる。作業をAIに任せることで、むしろ判断に使える時間は増える。

料理人に例えるなら、食材の下ごしらえを機械がやるようになっても、味を決めるのは料理人だ。下ごしらえの時間が浮いた分、料理人は味のクオリティを上げることに集中できる。


「決めて、回して、終わらせる」の時代

自分が大切にしている仕事の姿勢がある。「決めて、回して、終わらせる」

「決める」は意思決定。選択肢を整理して、リスクを見積もって、腹をくくって決める。 「回す」は実行管理。計画に落として、進捗を追って、問題があれば対処する。 「終わらせる」は完遂。途中で投げ出さず、結果を数字で確認するまでやりきる。

この3つが揃って初めて、経営は前に進む。

戦略コンサルの多くは「決める」の支援をする。でも「回す」と「終わらせる」はクライアント任せだ。中小企業の場合、そこを回す人間がいないから、戦略が絵に描いた餅になることが多い。

AIは「回す」の部分を強力にサポートする。データを集め、進捗を追い、異常を検知し、レポートを生成する。人間は「決める」と「終わらせる」に集中できる。

これが、AIが「右腕」の仕事を変える本質だと思っている。右腕が不要になるのではない。右腕がより多くの経営者を支援できるようになる。


おわりに――誰のための「右腕」か

中小企業の約半数が「適切な相談相手とのつながりがない」というデータがある(中小企業白書等の調査より)。

経営のことを相談したい。でも誰に頼めばいいかわからない。大手コンサルは高すぎる。近くに経験のある経営者もいない。結局、社長が1人で判断し続ける。

この構造を変えたい。

AIで業務を自動化し、1人の人間がより多くの会社を支援できる仕組みを作る。戦略を語るだけでなく、実際に回して、結果を出す。それを、中小企業が手の届く費用で提供する。

まだ構想段階だ。でも、自分が日々作っているAI業務自動化の仕組みは、その第一歩だと思っている。

この構想を検証しながら、過程を全て公開していく。実験の記録はXで発信中。


筆者について: コンサル・事業会社を経て中小企業の経営に参画。Claude Codeを軸にした業務AI自動化の仕組みを構築中。「決めて、回して、終わらせる」経営者の右腕。


Share this post on:

この記事が参考になったら

非エンジニアがAIで業務を自動化する実験を毎日記録しています。


前の記事
コード0行で作った73個の業務スキル、全部見せます
次の記事
月1,000円以下でAI業務OSを運用するコスト全公開