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「右腕の仕事」85個を全部書き出してみた

きっかけ――自分が何をやっているのか、わからなくなった

執行役員として中小企業の経営に参画して数年。ある日ふと、「自分の仕事って何だ?」と思った。肩書きは執行役員。でも実態は、経営会議も出るし、採用面接もするし、契約書も読むし、クライアントのクレーム対応もする。

試しに「自分がやっている(やったことのある)業務」を全部書き出してみた。出てきたのが85個。多すぎる。でもこのリスト自体が、中小企業の「右腕」のリアルだと思う。

全部載せる。これがこの記事の本体だ。


経営・戦略(11個)

  1. 経営戦略・中期経営計画策定
  2. 年度予算策定
  3. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定
  4. 社名変更・リブランディング
  5. 本社移転
  6. 事業の再設計・構造改革
  7. 新規事業立ち上げ(海外含む)
  8. 事業撤退判断・実行
  9. M&Aソーシング
  10. IPO準備・成長可能性資料作成
  11. 料金体系設計(サービスの値付け)

一番重かったのは「事業撤退判断」。 始めるより、やめる方がはるかに難しい。数字的に明らかでも、関わっている人がいる。感情と論理を切り分けて、最終的に「やめましょう」と経営者に進言する。これができるかどうかが、右腕の価値を決めると思っている。


ファイナンス(6個)

  1. PL/CF/ランウェイ管理
  2. ファイナンス戦略(デット・エクイティ)
  3. 原価構造改革
  4. 事業計画書作成(銀行・投資家向け)
  5. 資金繰り改善(経営危機時の立て直し)
  6. 補助金・助成金申請

意外だったのは「資金繰り改善」の泥臭さ。 ファイナンスと聞くと華やかに聞こえるが、実態は「来月の支払いに足りるか」を毎週確認する地味な作業だ。経営危機のときは毎日キャッシュの出入りを追う。数字が読める人と、数字で会社を守れる人は全然違う。


組織・HR(17個)

  1. 採用戦略・面接
  2. 評価制度設計・運用
  3. 組織設計・人員計画
  4. 人員整理・構造改革
  5. KPIマネジメント・PM/PMO
  6. 社内研修・教育プログラム設計
  7. 1on1・メンター制度
  8. 退職面談・退職交渉
  9. 就業規則整備・労務管理
  10. 社員のメンタルケア・相談対応
  11. 社内の人間関係トラブル仲裁
  12. ハラスメント対応
  13. 目標設定面談(MBO/OKR等)
  14. 社内報・全社メールの発信
  15. 社内表彰制度の設計
  16. 採用媒体の選定・運用、求人票ライティング
  17. リファラル採用の仕組みづくり・内定者フォロー

最もエネルギーを消耗するのは「退職交渉」。 数字の話は論理で片付くが、人の問題は論理だけでは動かない。相手の人生に影響する決断を伝える側になるのは、何度やっても慣れない。でもこれを避ける右腕は、右腕として機能していない。


経営者サポート(4個)

  1. 社長への報告・意思決定サポート(壁打ち相手)
  2. 社長不在時の意思決定代行
  3. 経営陣間の調整・根回し
  4. 社内への経営方針の伝達・浸透

この4つは地味だが、右腕の仕事の核心だ。「根回し」は特に過小評価されがちだが、これができないと会議が空中戦になる。 事前に各役員の温度感を確認し、落としどころを設計しておく。会議は決定の場であって、議論の場ではない。


マーケティング・営業・クライアントワーク(22個)

  1. ECコンサルティング(複数モール対応)
  2. WEBマーケティング全般(広告・SEO・CRM)
  3. SNS運用コンサル
  4. 広告運用・分析
  5. テレアポ・営業リスト作成
  6. 商談・プレゼン
  7. 営業資料・提案書作成
  8. クライアントリテンション(解約防止)
  9. セミナー・ウェビナー登壇
  10. LP制作ディレクション
  11. コーポレートサイトリニューアル
  12. プレスリリース作成・配信
  13. パートナー企業との業務提携
  14. 競合分析・市場調査
  15. クライアント向け月次レポート作成
  16. ホワイトペーパー・事例集作成
  17. 提案コンペへの参加・資料作成
  18. クライアント向け勉強会の実施
  19. 契約更新交渉・条件変更対応
  20. クライアントのKPI設計支援
  21. クレーム・トラブル対応(エスカレーション先)
  22. 大口クライアントのアカウントマネジメント

対外折衝(6個)

  1. 業界団体・経営者会合への代理出席
  2. 金融機関との折衝(融資面談・条件交渉)
  3. 来客対応・会社説明
  4. 取引先との会食・接待
  5. 行政・自治体との窓口対応
  6. 株主・投資家向け説明資料作成

バックオフィス・管理(13個)

  1. 契約書レビュー・作成、NDA雛形管理
  2. 個人情報保護方針・利用規約の策定
  3. 反社チェック
  4. 与信管理・債権回収
  5. 社労士・税理士・弁護士との折衝
  6. コンプライアンス・内部統制整備
  7. 情報セキュリティ(Pマーク等)
  8. 経費精算ルールの策定・承認
  9. 見積書・予実管理・月次報告の取りまとめ
  10. オフィス環境整備・社内イベント企画
  11. 業務マニュアル・ナレッジベース整備
  12. 社内ツール選定・導入
  13. 会社説明会の企画・登壇、インターンシップ設計

システム・AI(6個)

  1. 基幹システム切り替え・SFA導入
  2. 自社サービスの企画・開発ディレクション
  3. KPI設計・ダッシュボード構築
  4. AIエージェント開発・運用
  5. 業務自動化設計
  6. 会社SNS運用(採用広報含む)

書き出してみて気づいたこと

85個を眺めて、最初に思ったのは「これ、半分くらいは”経営判断”じゃない」ということだ。

見積書作成、契約書レビュー、求人票のライティング、月次レポートの取りまとめ。これらは「右腕の仕事」として日々こなしているが、本質的には**オペレーション(定型業務)**だ。戦略を考える人間が、なぜ見積書を作っているのか。答えは簡単で、中小企業には「他にやる人がいない」からだ。

ここに構造的な問題がある。右腕が定型業務に埋もれると、本来やるべき「考える仕事」に時間が割けない。経営者の壁打ち相手であるべき人間が、経費精算のルールを作っている。これは個人の時間管理の問題ではなく、中小企業の構造的な限界だ。


85個のうち、AIで置き換えられるのはどれか

このリストを前に、自分は分類を始めた。

AIで完全自動化できる(約15個): 競合分析・市場調査、KPIモニタリング、月次レポート作成、ニュース収集・要約、求人票ライティング、議事録作成、プレスリリースの下書き、データ集計・分析、見積書作成、業務マニュアル整備、社内報の作成など

AIアシストで効率化できる(約40個): 経営戦略の壁打ち、事業計画書の下書き、営業資料・提案書作成、契約書レビュー、評価制度の設計案、採用戦略の立案、広告運用の分析・最適化、SEO分析、クライアントレポート、予実管理の集計と可視化など

人間にしかできない(約30個): 事業撤退の意思決定、退職交渉、クレーム対応、経営者への進言、社員のメンタルケア、取引先との会食、金融機関との折衝、ハラスメント対応、組織の空気を読んだ根回し、社長不在時の判断代行など

約65%の業務がAIで自動化または効率化できる。 この発見が、自分がAIによる業務自動化の仕組みを作り始めたきっかけだった。実際にリストの中から自動化できるものを1つずつ仕組みに落としていった結果、今では数十個のスキルがAIエージェントで稼働している。


おわりに

「右腕」の仕事は、外からは見えにくい。華やかな戦略の裏に、地味なオペレーションが大量にある。でも書き出してみると、その地味な部分こそ仕組みで解決できる領域だった。

もしあなたも「自分の仕事が多すぎる」と感じているなら、まず全部書き出してみることを勧める。書き出した瞬間に「これは本当に自分がやるべきか?」という問いが始まる。その問いが、仕組み化の第一歩になる。

日々の実験と試行錯誤はXで発信中。


筆者について: コンサル・事業会社を経て中小企業の経営に参画。経営者の右腕として85業務を横断した経験をもとに、AIによる業務自動化の仕組みを構築中。


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