はじめに――なぜ「AI業務OS」を作ろうと思ったか
自分は中小企業で経営幹部をやっている。経営企画、マーケ、組織、財務、クライアント対応。見えるものは全部拾ってきた。
ただ、ずっと考えていたことがある。
「この業務量、1人で回せるのか?」
ふと考えた。今の自分の仕事のうち「人がやらなくていい仕事」がどれだけあるか棚卸ししてみた。ニュース収集、レポート作成、競合調査、定型的な分析、メッセージの整理。手を動かしている時間の半分以上が、判断ではなく作業だった。
だったらAIに任せよう。ただし、ツールを1つ2つ導入するのではなく、業務全体を「OS」として設計する。Claude Codeというローカルで動くAIエージェントを軸に、マーケ業務も経営管理もまとめて自動化する仕組みを作り始めた。
この記事を読むと、AIで業務を自動化する際の設計思想、失敗パターンと回避策、実際のコスト感が分かる。
この記事はシリーズの概要編だ。 全体像をざっと見せて、各トピックの詳細は個別記事で深掘りしていく。1本で全部語ろうとすると長くなりすぎるし、何より各トピックに十分な紙幅を割けない。
全体像――65個のスキルと三層アーキテクチャ
最終的に作ったシステムの構造はこうなっている。
ops/
├── ai-ops/ # AIニュースを自動収集 → チャットに投稿
├── ec-ops/ # ECニュースを自動収集 → チャットに投稿
├── calendar-ops/ # Google Calendarの予定をチャットに投稿
├── chat-digest/ # ビジネスチャットの未読をAIで要約
├── ec-consul/ # EC分析・提案(18スキル)
├── ig-consul/ # Instagram運用コンサル(18スキル)
├── biz-consul/ # 新規事業企画・検証
└── .claude/skills/ # /morning, /quick-input 等のコマンド
全部で65個のスキル(Claude Codeに登録した機能単位)がある。カテゴリごとに具体例を挙げると:
- EC分析: 検索順位の自動チェック、商品ページの充実度スコアリング、競合価格の定点観測
- Instagram運用: 投稿スケジュール最適化、ハッシュタグ効果分析、アカウント健全性診断
- 日次オペレーション: ニュース自動収集・配信、未読ダイジェスト生成、カレンダー予定共有
設計思想として採用したのは「三層アーキテクチャ」だ。
- Identity層: エージェントの行動原則を定義するファイル。「どういうスタンスで仕事するか」を書いてある
- Operations層: エージェント一覧と実行状態の管理。何が動いていて、何が止まっているか
- Knowledge層: 学習結果とフィードバックの蓄積。過去の失敗から学んだことが次のセッションに引き継がれる
例えるなら、会社の社訓(Identity)、組織図(Operations)、ナレッジベース(Knowledge)のようなもの。
ポイントは3つ目のKnowledge層で、MEMORY.mdというファイルに学習結果が溜まっていく。同じミスを繰り返さない仕組みを、AIの外側に作った。
シリーズ構成――各記事で何を書くか
この「AI業務OS」シリーズでは、以下のトピックを個別記事で深掘りしていく。
第1回: 朝のルーティン自動化(公開済み)
/morning コマンド1つで、ニュース収集・チャット未読要約・カレンダー共有が全部動く。50分→5分になった話。失敗3回の詳細と、方針転換の判断基準を書いた。
第2回: 1GB VPSでAIエージェントを動かそうとして3回失敗した話(公開済み)
月額数百円のサーバーでどこまでできるか。メモリ不足、権限エラー、cronジョブの罠。エレガントな設計を捨てて「crontab + Python 1本」に落ち着くまでの過程。
第3回以降(予定)
- MCPサーバー導入で5分で19ツールが手に入った話
- EC分析の自動化: KPIモニタリングから戦略提案まで
- AIエージェントに「記憶」を持たせる設計(MEMORY.mdの仕組み)
- コスト管理: 月1,000円以下で業務OSを運用する方法
各記事は独立して読めるが、この概要編を先に読んでおくと全体像が掴める。
ここまでの成果を数字で見る
AI化で削減できた時間を一覧にする。
| 業務 | Before | After | 削減時間 |
|---|---|---|---|
| ニュース収集(AI + EC) | 30分/日 | 0分(完全自動) | 30分/日(ECコンサルの実務で計測) |
| チャット未読確認・整理 | 15分/日 | 0分(自動要約) | 15分/日(ECコンサルの実務で計測) |
| カレンダー確認・共有 | 5分/日 | 0分(自動投稿) | 5分/日(ECコンサルの実務で計測) |
| 競合調査 | 2時間/回 | 数分/回 | 約110分/回(ECコンサルの実務で計測) |
| 月次レポート作成 | 4時間/回 | 30分/回 | 3.5時間/回(ECコンサルの実務で計測) |
日次業務だけで毎日50分、月換算で約17時間が浮いた。
浮いた時間は、クライアントとの対話や戦略設計など「人がやるべき仕事」に充てている。
このシリーズで伝えたいこと
個別記事で詳しく書いていくが、全体を通して伝えたいことは3つある。
1. エレガントな設計より、動く設計
凝ったアーキテクチャを組んでも、動かなければ1円の価値もない。「crontab + Python 1本」で十分なことは多い。
2. AIの品質はプロンプト次第
同じAIモデルでも、指示の具体性で出力品質が全然違う。高いモデルに課金する前に、まず指示を具体的にする。
3. 失敗しても資産は残る
動かないアプローチを潰す過程で作ったコード、プロンプト、設計思想は全て次に引き継がれる。遠回りに見えて、無駄な作業は1つもない。
おわりに
まだ道半ばだ。自動化できた業務はあるが、AIに任せきれない業務の方がまだ多い。
自分がやりたいのは、AIツールの紹介ではない。実際に業務で使い、失敗し、修正し、動くものを作る。その過程を全て公開していく。
この記事はシリーズの概要編。個別記事はすでに公開を始めている。Xでも構築過程を発信中。
このシステムの技術スタック: Claude Code (Opus/Haiku), MCP, Python, Node.js, ConoHa VPS, GitHub
筆者について: コンサル・事業会社を経て中小企業の経営に参画。Claude Codeを軸にした業務AI自動化の仕組み(65スキル)を構築中。